この日記では、当サイトの管理人 ”kodachi” が樹木に発生した病虫害を診断し、対策方法を提案します。
はじめに外観できる症状と特徴を写真を交えて解説し、その後、病虫害を決定します。症状から順に読み進めながら管理人”kodachi” と一緒に診断することは、樹木病虫害診断の良いトレーニングになる思います。樹木病虫害に携わる初心者&初級者の診断技術の向上に役立てば幸いです。
間違いも多々あると思いますが、ご容赦ください。
症状
4月の中旬、ヤマナシの葉に複数の黄色い斑点を見つけました(写真1)。
黄色い斑点部をアップにしたのが下の写真(写真2)です。
黄色い丸いものがたくさん。何かの卵のようにも見えますが・・・。
被害葉を濡れティッシュと一緒にチャック付きのビニール袋に入れてしばらく放置した後、卵のようなものをアップで再撮影したのが下の写真(写真3)です。
ゼリー状になっていました・・・。卵ではなさそうです。
下は5月の下旬に撮影した写真(写真4)です。変色部がしっかりしてきて葉の裏側に少し凹んでいます。
葉の裏側を見ると、房状のものができていました。黄色く変色したところの裏側にいくつもできています(写真5)。
下の写真(写真6)、右上はゼリー状ですね。ゼリー状物が房状になったんでしょうね。
さらに、6月初旬には葉が変色してたくさん落葉していました(写真7)。
落葉の裏側を観察すると、ありました、房状物(写真8)です。
診断結果
これは “さび病” ですね。ナシに発生するのは “赤星病” です。
ナシに発生する “さび病“ は2種の宿主間を移動して寄生する菌(異種寄生菌)で、中間宿主はビャクシンです。
したがって、この病害の発生には近くにビャクシンが生育している必要があります。
探してみると・・・。ありました!
そして葉の先に綿のような黄色い球状物が見つかりました。
ビャクシンの “さび病(ナシ赤星病)“ に関係のあるものなのかな?
しばらく観察することにします。
生活環
“さび病(赤星病)“ は、以下のように感染、拡大します。
- 冬はビャクシンに寄生
- 春になると冬胞子堆をつくり、そこに形成された担子胞子が飛散
- 飛散した担子胞子がナシの葉に付着し、赤星病が発生
- その病斑上にさび子腔(写真5、6、8のことかな?)をつくり、その中のさび胞子が飛散
- 飛散したさび胞子がビャクシンに付着。寄生して冬を越す
かなり複雑ですね。
湿度が高いところによく発生します。
防除
“さび病(赤星病)“ を防除する方法としては、
- 発生初期に被害葉を摘み取り、焼却する
- 各世代の胞子が飛散する時期に殺菌剤を散布する
- 中間宿主であるビャクシンを取り除く
- 枝葉が過密にならないよう管理する
などが有効でしょう。
使用できる農薬
樹木類の さび病(赤星病)” に使用できる農薬(殺菌剤)は見当たりませんでした。
ナシの “赤星病” に使用できる農薬(殺菌剤)には以下のものがあります(2024年3月16日現在)。
- マンネブ水和剤(商品名:エムダイファー水和剤など)
- マンゼブ水和剤(商品名:ジマンダイセン水和剤など)
- キャプタン水和剤(商品名:オーソサイド水和剤80など)
- トリフルミゾール水和剤(商品名:トリフミン水和剤など)
- テトラコナゾール液剤(商品名:サルバトーレME) など
“さび病” については、下記の記事もご参照ください。
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